20 ホラーにハマりたい

未知なる死を恐れると同時に、死を疑似体験したいという欲求が、ホラーという禁忌の根源にある。ジュリア・クリステヴァの言葉でいえば、おぞましさのもとにある「アブジェクシオン(abjection)」になぜ引きつけられるのか。身に迫るおぞましいものを棄却しようとしている一方で、その棄てたものが自分にとって実は身近なものであったりする。理不尽なものに恐怖しながら魅力を感じ、暴力に怖れを抱きながら魅了される。この棚では、不可解であるが目を離せない人の行動や心理に向かう。

CORE BOOK

「ホラーにハマりたい」を象徴する本です。

富江

伊藤潤二の名を世に知らしめた「富江」。傑作集1・2巻に収録されている。長い黒髪、右目の下に泣きぼくろのある、美しすぎる少女・川上富江は男たちを惑わし、狂気の愛へと走らせる。男たちの愛はしだいに殺意へと変わる。富江は殺されても殺されても蘇り、平然と姿をあらわす…増殖する…。伊藤潤二のホラーは、怖くて不気味なだけではない。几帳面に細部まで描きこまれた絵はつい見惚れるほどに美しい。また、その緻密さゆえに恐怖の果てには思わず笑いまでもがこみあげてくる。

  • 20 01

    開幕、恐怖劇場

    大人にとってホラーの本質は自分は離れた安全な場所にいて、他人がひどい目に遭うのを眺めて楽しむというところにある。そしていつか自分も同じ目に遭うかもしれないという微かな不安が隠し味となる。一方で子どもたちはどこまでもその痛みを引きつけ、限りなく自分のこととしてその恐怖を共感しようとする。闇に潜むものがどんなに怖かったことか。我々は皮膚感覚の「恐怖」を失うことで大人になっていく。

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  • 20 02

    顔のないご近所

    悪霊やゾンビといった具体的な異形の姿をもって現れる恐怖もあれば、不安感や気配、影のようなものといった実体のない恐怖もある。我々の心理を支配するその「何か」は家庭内の暴力や学校内のいじめ、得体の知れない隣人や自殺衝動として作用する。それは我々の現実の生活や社会問題に直結しているため、余計に怖いものがある。その根源にあるのは「他者」への恐れや嫌悪感だ。

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  • 20 03

    絶体絶命セカイ

    ホラーは多くの場合、主人公の知覚する半径数mのリアリティが描かれる。恐怖するもの、恐怖されるものの1:1の関係を閉じれば閉じるほど密度が高まっていく。一方で主人公たちの集団が体験する惨劇の範囲が広がれば広がるほどカタルシスが得られることもある。例えば、異質な存在によって破壊された都市を舞台にしたパニックものがそうだ。そこでは一個人の死への欲望が「世界の終わり」を求める気持ちへと拡大される。

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  • 20 04

    精神のガクガク

    闇の奥にあるもの、恐怖を超えたところにあるもの。そこにこそ真の「この世ならぬもの」がある。この世界を創生する原始の秘密と呼んでもよいかもしれない。一部のマンガ家はそれをイメージすることが可能で、我々の共通言語へと橋渡ししてくれる。稀有な存在だ。彼ら・彼女たちは我々が「常識」とするもの、「禁忌」とするものから逃れ、自由に発想する。ルネ・ジラールの言う「世の初めから隠されていること」とはこのことだ。

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  • 20 05

    node(ノード)

    ビブリオシアター2F「DONDEN」には、「node(ノード)」と呼ばれる張り出した本棚がある。 各トピアの中の漫画・新書・文庫が、小見出しの軸をこえて交わる「結節点」として、意外で新たな本と出会う場へようこそ。

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「ALIEN」には他にもこんなテーマがあります。

  • 17

    神と悪魔の語り部

  • 18

    異形との出会い

  • 19

    目覚めたら超能力

  • 20

    ホラーにハマりたい