JUL 08, 2019
INTERVIEW
近大から ”ファシリテーター” は生まれるのか。
INTRODUCTION
ディスカッションラボの立ち上げについて、アイデアの発想法、今後の展望について所長の西井 香織さんにお話を伺うことができた。
議論を科学する研究所 ディスカッションラボ
ラボのハジマリ
ディスカッションラボとは、学校では教えてくれない“議論の流れ”を科学し、体系化することで、企業や社会の課題解決に取り組んでいる研究所である。その大きな柱として「ラボ3ヶ条」というものが存在する。
- 1つ目は「ゴールの明確化」だ。議論をするにしてもアイデアを発想するにしても、まずは何のために行うのか、必要な要素や話し合うべき項目は何かを元にゴールを決め、共有する。
- 2つ目は「議論の可視化」だ。ゴールから逆算して議論を組み立て、ターゲットの行動などを文字や図を使って目に見えるようにすることで、議論という目に見えないものを視覚的に捉える。
- 最後の3つ目は「適切な問い」だ。従来のビジネスフレームワーク「5W1H」に加え、独自のフレームワーク「Insight: 本当に?」「if: もし」「Specific: 例えば」「Summary: まとめると」の「2I2S」の提唱。
以上のルールを踏まえて、ワークショップやアイデアソンが構成されている。
ラボ立ち上げのキッカケ
薬学部6年生で休学した際に、議論には「その目的を達成するための最適解があるはずだ」と信じ、”議論を科学する研究所”としてこのラボを立ち上げた。フリービット株式会社が開催しているビジネスコンテストにおいて、2016年度のファイナリストで銀賞を受賞した。それをきっかけに今まで自身の趣味で活動していたものが、賞をもらって「これは価値があることだ」と実感した。そこで最初は関東のメンバーと学生団体NoName. 、NEWRON株式会社で築いた人脈を使って設立された。今では関西のメンバーの方が多いようだ。ビジコン受賞から株式会社設立、そして現在のディスカッションラボ活動に至るまでのスピード感は著しく、起業は恐れずに実際にやることが大事だと言っていた西井さんの言葉には説得力があった。
ディスカッションラボと学業
両立成功の秘訣
薬剤師の国家試験の勉強とディスカッションラボの活動との両立は難しそうに思われるが、西井さん自身、授業中は授業内でしっかりとコミットできるほど要領が良い方であるそうだ。それでも多忙な薬学部の勉強とディスカッションラボの活動を両立することができた一番大きな要因は、ディスカッションラボの運営を右腕に任せたということだ。ビジネスプランコンテストに一人で出ることからも伺えるが、なんでも自分で考え、動き、賞をもぎ取っていくことができた。その半面、人に任せるのが苦手だったようだ。だがディスカッションラボ設立後、忙しくなり自然と人に任せざる得ない状況になった。そこで良き右腕に任せチームを自走させることに成功した。
うまく人に仕事を分け与える分配メソッド
ディスカッションラボとは、「議論を科学する場」である。前提は、マネジメント力をつけたい学生にはイベントの運営を任せるなど「したい人にやってもらう」ということだ。そしてメンバー全員がしたくなるように仕向けるということだ。なんのために関わらないといけないのか、この活動がどのように将来に繋がるのかを明確にすることで、メンバー一人一人に本当にやりたいことを割り当てることができるのだ。西井さん自身、タスク管理は苦手で、朝起きて今日一日やるべきことを付箋に書いて貼るそうだ。メリットはデジタルよりも何度も貼り直すことができる点だ。
薬学部でビジネスプランをどのように学んだのか
元々興味のあったファッションに関する事業において、リアルでは集客できていた。さらに、ウェブでも集客する方法を学ぶために東京で半年間インターンに行った経験が一番の学びであった。それに伴って、起業家の家入さん主催のシェアハウス「リバ邸」での生活においてもかなり刺激を受けた。シェアハウスの生活を通して、情弱→情報通となり、プレゼン・司会・前に出る際の自信を作るトレーニングともなった。やはり座学よりも実戦あるのみということなのだろう。
アイデア創出の革新的源泉
アイデアの生まれ方
アイデアは常にストーリーで考え、生み出される。「こういう飲み物が欲しい」と点で考えるのではなく、「どのようなシーンで?いつ飲みたいのか?そのときの気分は?」といったストーリーを想定しながらアイデアを考えていく。西井さんは右脳タイプで、お風呂場などでアイデアが生まれることもあるようだが、煮詰まったら散歩するのが良いようだ。ディスカッションラボのワーク中では、座ったまま議論するのではなく、立たせてホワイトボードに付箋を貼らせるなど体を動かして議論するそうだ。議論はゴールから逆算して導かれた最低基準を意識してなされる。最終的にはアイデアマッピングを用いて、出てきたアイデアを整理し、実現可能性や審査項目に基づいて絞り込んでいく。
ゴールを決め、達成するための必要要素を取り出す。
ゴールから逆算して考える。西井 香織
ディスカッションラボ所長
発想力を鍛える
西井さんは、いいなと思えるサービスに対して逆算することを常に意識していた。先日、本学のビジコン説明会で「Magic Calendar」の紹介があったが、すごいなーではなく「どのようにして生まれたのか」「紙×IOTである」などアイデアの裏側まで考えていた。使う側としての感想ではなく、完成されたアイデアからも逆算して発想者側の思考を捉えることで新たなアイデアを生み出すヒントとなっているように感じた。
ラボにおけるアイデアを考える際の工夫
企画で参加者に何を持って帰ってもらうのか、そのためには何をワークするのか、という風に逆算して考えている。例えば、「キャッチコピーの作り方が分からない」という場合にはワークシートに単語を入れるだけでキャッチコピーが完成するものを使用する。加えて参加者に「なぜそうなるのか、そうしなければいけないのか」を問う。常にゴールを意識し、ディスカッションラボがゴール達成の場となるようにしている。企画内では方法論などのインプットとワークシートで実際に手を動かすアウトプットとをセットで扱うようにしていた。
是非、ディカッションラボのWSで体感して欲しい。
誰でも “ファシリテーター” になれる。
西井 香織
ディスカッションラボ所長
ディスカッションラボのソノサキ
西井さんは誰でも “ファシリテーター” になれると考えている。
ここで言う “ファシリテーター” とは「ゴールを達成するために議論をする人」である。
そんな人を集め、仕組みを一緒に作って広めていくことが今後の目標だ。
我こそは!と思ったそこのあなた。ディスカッションラボを覗いてみてはいかかだろうか。
近大から多くの “ファシリテーター” が生まれる日もそう遠くないように感じた。
EDITING TEAM
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Writer
長島 優輝
経営学部 商学科 3年
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Photographer
川添 陸
経営学部 経営学科 3年