24 笑いとオチの現象学

4コマは画期的な「日本という方法」である。俳句の五七五と同様に凝縮された編集技術がそこにはある。4コマギャグマンガに加えて、本面では、ギャグを世界文学とも通じる3テーマ(「ナンセンス」「パロディア」「不条理」)に分類し、メディエーションと方法の工学化を深く考察する。 一般常識といわれるコモンセンスに対してナンセンス、パロディアとは日本流にいえば「本歌取り」。リメディエーションすることで笑いや風刺して新しい見方をつくる方法である。西洋的思想、哲学を背景にした不条理ジャンルのマンガも次々と生み出されている。方法によって、世界を再編集する野心に満ち溢れた書棚。

CORE BOOK

「笑いとオチの現象学」を象徴する本です。

天才バカボン

レレレのおじさん、ウナギイヌ、目玉のおまわりさん。フランスの哲学者アンリ・ベルクソンは、主著『笑い』の中で「喜劇とは生を真似る遊戯」であると書いた。赤塚不二夫のシュールで破壊力あるギャグ漫画が今なお愛されているのは、キャラクターや物語がその圧倒的なまでの生命の躍動感をもって全力で遊ぶことにある。バカボンのパパは今日も「これでいいのだ」と叫ぶ。バカボンの名前は、「バガボンド」や梵語で仙人を意味する「薄伽梵」に由来するという説がある。

  • 24 01

    ナンセンスの栞

    マンガジャンルにおいて「ナンセンス」はギャグマンガに分類される。ナンセンスマンガには、前衛ギャグマンガ家と称された赤塚不二夫や谷岡ヤスジから佐々木マキやタナカカツキらの作品が含まれる。マンガに限らず、世界文学や哲学・思想まで広げて系譜を探れば、文学は「マザー・グース」やルイス・キャロルの「アリス」、思想はアリストテレス以前まで遡る必要がある。そこには「論理とは何か」という難題が待ち受けている。

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  • 24 02

    コマるんです。

    短いコママンガといえば、現代では4コマが定型となっている。その起源は葛飾北斎の「北斎漫画」にあるといわれている。しかし明治期にはまだ4コマは定着していなかった。3コマから数十コマの多様なコママンガが混在していた。世界に目を向けてみると同じ東アジアの韓国と中国は4コマが定着しているが、欧米では3コママンガも少なくない。ニッポンではなぜ4コマが定型となったのか。型を重んじる日本文化の深層にも触知してほしい。

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  • 24 03

    パロる。ラクゴる。

    古代ギリシャの哲学や詩学は「アナロギア」(類推)と「ミメーシス」(模倣)と「パロディア」(諧謔)を創作の3原則に据えた。このうちの「パロディア」を取り上げる。パロディアにはいわゆるパロディもスパティッシュも含まれる。一言でいえば、<笑いのための「創造的模倣」>である。井上ひさしや筒井康隆が日本のパロディア文学の天才だ。パロディアの技法や理論とともに「模倣」につきまとう「盗作」をめぐる著作権問題も注視したい。

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  • 24 04

    不条理で休みます

    「不条理」は、同面の「ナンセンス」と表面的には言葉の意味が似ている。しかし取り扱う著作の傾向はかなり異なる。「不条理」は、思想的には実存主義哲学の影響が強く、不条理文学として名高いアルベール・カミュやフランツ・カフカ、ミラン・クンデラの諸作品に通底する文学的方法である。また、不条理文学の作家たちには<不条理な現実と闘うための「笑い」や「ユーモア」を重視する>という共通した創作姿勢がみられる。

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「PASSION」には他にもこんなテーマがあります。

  • 21

    モザイク模様の愛

  • 22

    恋する女の生きる道

  • 23

    交際するメディア

  • 24

    笑いとオチの現象学