26 アスリートのボールゲーム
部分と全体、組織と役割。明確なゲームルールと行方の知れないボールの軌跡。我々がボールゲームに熱中するのは、単純なルールが複雑なプロセスを生み出すことと、近代的自我を超えて集団的自己に自らを投企できるからであろう。そこに読みとハコビと関係の瞬時の相互編集が起こる。 オフサイドの導入によって得点の重みを重視したサッカーやラグビー、逆に得点の醍醐味とプレイの連続性を重視したバスケットボール。チームビルディング、ゲームマネジメントは実学の実践に欠かすことはできない。超実学のためのインタラクティブ・システムのヒントがここにある。
CORE BOOK
「アスリートのボールゲーム」を象徴する本です。
Slam dunk
バスケットボールマンガの金字塔、『スラムダンク』のヒットは日本人NBAプレイヤーの登場を予告していた。桜木のリバウンド、流川のダンク、三井の3ポイント。放った瞬間、時が止まる。宙に浮いた体。心の言葉。祈る観客。決まる。時間が動き出す。大歓声。艱難辛苦と朝鍛夕錬のあとの、歓喜の一瞬の凝縮と爆発を何台ものカメラで同時に見せることは、マンガだからできることなのである。作者 井上雄彦による障害者バスケットボール漫画『リアル』も併せて読んでもらいたい。
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26 01
イナズマ五人抜き
サッカーやラグビーでは、サイドが入り乱れる。オフサイドの概念により、両チームはゴールラインとの見えない平行線が刻々変化するのを意識しながらプレーしている。野性的なプレイヤーたちの瞬時の判断が知的で魅力的だ。オフサイド・ルールは、ゴールラインの近くでの待ち伏せを超越しながら、エキサイトできるほうへ発展してきた。それがプロセスを複雑にしてゲームをおもしろくさせている。 -
26 02
エアダンクのリアル
バスケットボールは、あえてオフサイドを消滅させることでおもしろくなった。ゴール下で待っていて、ロングパスを受けたプレイヤーがダンク・シュートをしてかまわない。得点を多くとれるぶん、一本の重みは他のスポーツほどではないと思われがちだが、接戦で迎える終盤の緊張には、汗が出る。やはり、 勝負はギリギリのところでしか決着がつかない。 -
26 03
ファイトでアタック
ネットを挟んで交互にサーブをおこなうバレーボール。サイドを問題にする必要はない。一瞬しか触れないボールをつないでいき、切ったほうが負けである。いかにして敵のフォーメーションを読み、ブロックを振り切り、味方を輝かせるか。最初の5分〜10分間くらい、熾烈な闘いのなかで作戦が組み立てられるという。人間観察のプロがチーム作りの要となる。 -
26 04
ウィンブルドンを狙え
静まりかえったコート上、ネットを挟んで二人の選手が、ボールを打ち合う。グラウンドは芝、クレー、ハードコート。技はサーブ、ボレー、ストローク、ロブ、スマッシュ、パッシングショット。ボールを打つ音、シューズが地面をこする音、選手の息づかいや声。テニスは、クラシック演奏のように、闘うものと見るものに儀礼が要求される競技である。明示されたルールと暗黙のルールが競技でどう成立するのかという視点でも、テニスは興味深い素材である。