実学シーズ

養殖魚の皮から採った フルレングスコラーゲン

多賀 淳

  • #プロデュース
  • #サステナビリティ
化粧品原料としてよく知られているコラーゲンは,多くのものはブタやウシなどの哺乳類や魚類の皮膚に多く分布するI型コラーゲンと呼ばれる分子量約30万の巨大な繊維タンパク質です。このI型コラーゲンは優秀な保湿剤として基礎化粧品に多用されていますが,口蹄疫や狂牛病など伝染病の流行の歴史からヒトと遺伝子的に遠い魚から採ったコラーゲンに人気が集まっています。魚皮を元原料として使用するI型コラーゲンを製造するにあたり,飼料や投薬のトレーサビリティーの取れた養殖魚は安全性の上で優位性が高いと言えます。食用に調理される大型魚の皮は廃棄されることが多いのですが,これを元原料とすることで資源の有効利用にも繋がります。

いま取り組むべき社会課題

コラーゲンの元原料を養殖魚由来に限定することで,循環的社会の構築に寄与できると考えられます。また,通常のI型コラーゲンの製造方法とほんの少し処理条件を変えることだけで立体構造を変化させて,格段に水への溶解性を高め皮膚や繊維への親和性を高めることに成功しました。

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まだ世の中にない新しい魅力

魚皮由来I型コラーゲンは水溶性が低いという問題点がありました。そこで,I型コラーゲンの立体構造を少し変化させて水溶性を高めるとともに生体表面への親和性を向上させることに成功しました。通常のコラーゲンに比べて生体表面への親和性が高いため,フェイシャルケアだけでなく,ヘアケアにも有用であり,また,セルロース系繊維素材からの各種ポリマーによる機能性繊維製造に使用すれば洗濯耐性を向上させることができます。

研究をもとにしたプロダクトと挑戦

現在の利用・活用シーン

ファイシャルケア化粧品原料して美容液等が販売されています。また,ヘアケア商品原料としてシャンプー,リンス,ヘアウォーターにも使用されています。その他,天然素材やセルロース系化学繊維への機能性付与に使用されています。

挑戦したい領域・分野

天然型のI型コラーゲンと立体構造を少し変化させたフルレングスコラーゲンの違いを実感していただき,化粧品原料としての使途を拡大したいと考えています。また,粘膜保護にも有用と考えられますので,食品や化粧品に多用できるものと考えています。

事業者の皆様へのメッセージ

I型コラーゲンを部分変性させることで保湿性と肌への滞留生を向上させていますが,ゼラチン化していないので,粘性は低く使用しやすい原料です。また,高度に無臭化できていますので無香料化粧品や衣類の機能性付与にご使用いただきたいと思います。

より詳しい情報を知りたい皆様へ

解説者

多賀 淳

Atsushi Taga

薬学部医療薬学科

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