17 神と悪魔の語り部
人類の歴史は、神と人の関係性の変化の歴史でもあった。古来より人は天変地異、集団の意志を超えたモノ・コトに畏怖を感じ、それを神とした。神とのコミュニケーションとして呪術が生まれ、その記録が神話や伝説となり、宗教として体系づけられていく。その過程において天国と地獄、天使と悪魔も生まれていった。 無数の神々たちの系譜、宗教の成立とその創始者の伝説。編集されてきた神と人間の物語を、マンガは換骨奪胎してファンタジー作品やバイオレンス活劇として、さらに再編集をしてみせている。その物語の奥に潜む、神話の原型を新書、文庫で読み解いていきたい。
CORE BOOK
「神と悪魔の語り部」を象徴する本です。
火の鳥
広大無辺の宇宙。その何十億年もの営みと比べたとき、一人の人間の数十年の生はおぼろげではかない。たとえ何千年にも渡って輪廻転生を繰り返したとしても。しかしその宇宙に意味を見いだすのもまた人間なのである。その血を飲めば永遠の命が得られるという火の鳥をめぐって人類は浅ましさ、愚かさを剥き出しにして争う。手塚が『火の鳥』に構想したのは、あらゆる生命の息吹、人間の生と死そのものであった。
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17 01
世界神話体系
人類が言葉を獲得した頃、物語とは未知なるものを記憶する術であり、世代から世代へ地域や時代を超えて語り継がれた歴史であり、限りなく神話に近かった。常ならぬものは神=超越した存在の御業とされ、敬い、畏れ、近づけたり遠ざけたりするために詩や唄や壁画が用いられた。現代に生きる我々の抱えた分断された歴史。それをひとつにまとめるとき、あらゆるマンガ=テキストたちはひとつの世界神話体系を形作る構成要素となるだろう。 -
17 02
呪いの処方箋
呪術とは他人に災いをもたらすためだけにあるのではない。そもそもは神とコミュニケーションを図るためのプロトコルであり、神の声を聞き、神に願いを伝えるための慣習的な手順/儀式の体系であった。現代のマンガでは「呪われた運命」といったようにキャラクターの性格付けで用いられることが多いが、むしろそれは他者としての神を前にしたときの振る舞いを規定するものと捉えたほうがよい。 -
17 03
天使のマーキング
天使とは神の使いであり、悪魔とは神に敵対するものである。サタンがかつて天使の一人であったのが堕落して地獄に落ちたように元々はひとつの超越的存在であった。ゆえに今も人間の善悪二面性の象徴として用いられる。マンガでは天真爛漫な天使的人物、メフィストフェレスに代表される悪魔的人物として直接的に性格化されることも多いが、天使そのものが現実的な存在として登場するファンタジー作品もある。 -
17 04
祈りとイコン
有史以前から人は、自然の中に人間よりも高次の存在があることを感じながら暮らしてきた。それはやがて神として概念化され、敬い、畏れ、崇める様々な向かい方が後に宗教やその経典としてまとめられてきた。仏教、キリスト教、イスラム教。宗教はその地域・時代の人々の生活に密接に結びつくが故に、例えば仏教では般若心経や法華経や華厳経などと細分化されていった。宗教を描くマンガは人々の苦悩をその多様性の中に描くことになる。 -
17 05
node(ノード)
ビブリオシアター2F「DONDEN」には、「node(ノード)」と呼ばれる張り出した本棚がある。 各トピアの中の漫画・新書・文庫が、小見出しの軸をこえて交わる「結節点」として、意外で新たな本と出会う場へようこそ。