23 交際するメディア

マンガ上の「エロス」の流れを俯瞰すれば、春画と印象派に類似する劇画ジャポニスムがある。近年ではヨーロッパを中心に再発見が進んでいる。また、日活ロマンポルノが多くの映画監督を誕生させたように、「エロマンガ」から数々の才能が生まれてきた。エロでなければならないという規制が、表現の自由を生んできたのである。性が男性の消費物とする社会に抗して、女性が描く「性と死」がマンガでも大きな潮流をつくっている。最後に法的な観点からみれば、表現の過激さから規制される「有害コミック」問題は、現代社会が「性と死」の問題に蓋をしてきたということを象徴している。真の実学には、都合の悪い「性と死」の問題が避けて通れない。

CORE BOOK

「交際するメディア」を象徴する本です。

仮想恋愛 : 近藤ようこ初期作品集 1

男女は永遠に分かり合えない。身体は束の間交わることができても、同時に心の交感がおこるかどうか、誰にも断言できない。今でこそ『死者の書』や『五色の舟』といった幻想的な文芸作品で知られる近藤ようこであるが、漫画家になった24歳の頃は生活のため、いわゆるエロ劇画誌に短い作品を書いていた。自ら語るように「ここには今も昔も変わらない、ある種の(こめんどくさい)女のナニカが醸し出されている」。

  • 23 01

    艶のジャポニスム

    ジャポニスムは西洋美術における日本美術の影響を指す。とりわけ浮世絵がモネやマネを筆頭とする印象派の画家たちに人気を博したことはよく知られている。昨今(2016年現在)話題となっている「春画」も浮世絵の一種だ。「春画ジャポニスム」に対して、現代では「劇画ジャポニスム」というべき潮流がみられる。シャープな線、荒っぽいタッチ、効果線の多様などを特徴とする「劇画」がバンドデシネの作家たちから愛されているのだ。

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  • 23 02

    禁断をまたぐ

    セクシャリティとエロティシズムを強く感じさせるマンガの一部は「エロマンガ」というジャンルで括られている。「エロマンガ」とみなされた作品は、「猥褻物」としての偏見と誤解がつきまとうことになる。だが、エロマンガを含めたエロティックな表現と媒体には、驚くべき創造力が伏せられていることを忘れてはならない。かつてのエロマンガ誌が現在メジャーシーンで活躍するたくさんのマンガ家たちの出発点であり母体となったという事実はその一例である。

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  • 23 03

    土曜日のガールズライフ

    「戦場のガールズ・ライフ」の名称は世田谷文学館で開催された「岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」(2015年)に肖っている。岡崎の『リバーズ・エッジ』にみられる「平坦な戦場で僕らが生き延びること」(ウィリアム・ギブスンの詩から引用)からきっとインスピレーションを得たのだろう。この物語の中の少女たちにとって日常は「見えない戦争」と化している。ここには現代思想も文学もとうてい及ばない問題提起がある。

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  • 23 04

    報道する勇気

    青少年条例や児童ポルノ禁止法など、マンガに対する規制が強化されつつある。規制については賛否両論あり、「表現の自由」の問題として取り上げられることが多い。こうした規制問題を発端にして、そもそも<「有害」とは何か>という問いに全方位的に取り組んでもらいたい。ちなみに著者・山本直樹は複数回におよび有害図書指定を受けたことがある一方、『レッド』では文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞しており、有害(異端)/無害(正統)を越境する稀有な作家である。

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  • 23 05

    node(ノード)

    ビブリオシアター2F「DONDEN」には、「node(ノード)」と呼ばれる張り出した本棚がある。 各トピアの中の漫画・新書・文庫が、小見出しの軸をこえて交わる「結節点」として、意外で新たな本と出会う場へようこそ。

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「PASSION」には他にもこんなテーマがあります。

  • 21

    モザイク模様の愛

  • 22

    恋する女の生きる道

  • 23

    交際するメディア

  • 24

    笑いとオチの現象学