05 もうひとつの世界へ

来たるべき世界、宇宙戦争、アナザーワールド。想像力の大いなる産物であるSFは、小説や映画、マンガといったメディアで繰り返し描かれている。まだ見ぬ世界・あり得ない世界を現しながら、そこには「当世」が色濃く反映され、時々の価値観を常に転倒させていこうとする姿勢が浮き彫りにされる。 科学進化の加速と制御不能な技術の誕生が描く旅物語は、全く予想できない未来への道のノンストップ・ハイウェイなのかもしれない。残された未知なる世界は、インナースペースである身体宇宙か、記録された過去とは異なる空想の過去か。世界の別様可能性を考察するアブダクション&イマジネーション書棚。

CORE BOOK

「もうひとつの世界へ」を象徴する本です。

Akira

2019年。薬物によって超能力に目覚めた鉄雄。27年前東京を壊滅させたため地下深く冷凍封印されていたアキラ。力と力がぶつかり合うなか、ネオ東京は崩壊する。暴走族のリーダー金田と反政府ゲリラのケイは教祖ミヤコらの助けを得て最後の戦いへと向かうが…。細部にこだわり、執拗に描き込まれた絵が悪夢的な近未来SFをリアルな世界に感じさせる。映画化されたアニメと共に日本を代表する漫画のひとつとして海外でも高く評価され続けている。

  • 05 01

    ハロー異星人

    未知の惑星や地球外生命体はSFにおける定番モチーフだ。人類の存亡を賭けたシリアスドラマからLGBTのもっと先を行く異種族間恋愛、宇宙の海原に波を蹴立てて突き進む冒険譚まで味付けもさまざまに取り揃えられている。ところが、これらの作品はSF的ギミックやシチュエーションに彩られてはいるものの、現実の世界を拡大・強調してみせた物語でもあるのだ。日常の語り口では伝わらないエッジの鋭さを身構えず生身で受け止めてほしい。

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  • 05 02

    風の谷の999

    羅針盤の針が指し示す未来が明るいと誰が決めたのか。『銀河鉄道999』の星野鉄郎が目の当たりにしたものは、機械化された人間たちが生身の人間を虐殺する泥まみれの未来ではなかったか。街の摩天楼にまたたく光彩は、ひとの生命が燃える明るさではなかったか。わたしたちが走る道の向こうから顔を照らす陽光は沈みゆく日没のものではなかったか。ユートピアとディストピアが鋭く交錯する刹那、破壊と再生の混ざり合うドラマがここにある。

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  • 05 03

    裂け目からアナザー

    眼前の世界が崩壊する不安。現在の閉塞が融解する希望。災厄が突如として降りかかったあとの<世界>、科学のちからによって歴史の改変が引き起こされた<世界>、それらを受け入れる勇気があなたにはあるか。何かを選んだ瞬間に、ほかの選択肢はすべて廃棄される。<今>という場所から観望する未来は、無限増殖する分岐によって織りなされる悪夢のタペストリー。極限状態の只中に、掴み得る未来は残されているのか。不可逆と可能性の物語群。

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  • 05 04

    <もしも>がたくさん

    『ドラえもん』のひみつ道具ランキングでも上位に入る「もしもボックス」。「もしも」は、時間や場所の断面に介入し、さまざまな歴史解釈、異世界構築を可能にする。もしも「もしも」が禁じられた世界があるならば、そこでは今ある物語の大半が死滅してしまうのではなかろうか。「もしも」は荒唐無稽を売りにしているのではない。仮想と現実のズレにこそ、現代社会の実相が切れ味鋭く描かれている。アブダクションのドライブが効いた作品たち。

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「ENGINEERING」には他にもこんなテーマがあります。

  • 03

    時空をめぐる宇宙旅行

  • 04

    マンマシーンと変なエンジニア

  • 05

    もうひとつの世界へ